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12歳のハローワーク 関西支部 京滋地区   2019年03月01日(金)20時00分

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平成31年2月5日
12歳のハローワーク
京都市立安井小学校にて

まだまだ寒さが厳しく「冬真っ盛り」という可笑しな言い方も
出来そうな時期ではありますが、この日はその前後の日に比べて
まだ特別な寒さを感じる事のない、言ってしまえば冬にしては
過ごし易い日となりました。
長年の日本の都w、京都市の右京区にある安井小学校に於いて、
京滋地区の「12歳のハローワーク」は行われました。

音楽室でピアノの配置や、アクションモデル等の準備、ピアノ奏者の
簡単なリハが終わり、約60名の小学5年生の子供達が部屋に入って
まいりました。

まずは、同行頂いた右京ふれあい文化会館副館長の木下さんから
簡単な行事の流れと企画の意図、スタッフの紹介等があり、
いよいよ我々の番となりました。
まずは、永野氏より「ピアノの音がどのように揃えられてゆくのか?」
「音のうなりとか実際どんなものなのか?」が説明されました、
永野氏はもっと緊張されるのかと思いきや、まるで学校の先生のように
教壇に立ち、身振り手振りを加えてお話しされる姿は、これからの
スケジュールを思うに「たのもしくさえ」感じられました。

実際に音叉の440Hzのものと442Hzのものを同時に鳴らして
「音の揺れ」というか唸りを子供達に聴いて貰ったり、我々が何を
基準に音を聴いて合わせているのか等、ユニゾンを中心に調律と
いうものをお話して頂きました。

そして後で鳴らした音叉に素手で触って貰って、振動というものも
体感してもらいましたが、子供達はブルブルと振動する音叉に
「こそばい」とか「痛い」とか、想像も出来なかったのでしょう、
音の正体の一つの現象に驚きと共に親しみを持ってもらえたんじゃ
ないかなぁとか思います。
また小学5年生というともっと「マセ」出してるのものかと思いきや、
まだまだ初々しくとても可愛らしい反応に、我々が「失くして行ったもの」
を思い出させてくれたようで、世の中は随分と変わっては来たのですが
「あゝこういう心って、良いもんだな~」と思った次第です。

あらかじめ選抜して貰った5人の生徒さんに、楫氏が横に付いて
チューニングハンマーでユニゾンの調律を体験して頂きました。
こんなものを回した事など今までにあるハズもなく、また弦という
緊張の高い金属の線状のものが思いもしない強さで引っ張られてる所を
緩めたり締めたり、唸りは激しく発生したり、揺らぎが減って行ったり
する音に、それは恐々でも無理はありませんが、優しそうな紳士が横に
付いていてくれるので頼もしかったに違いありません。
でも正直「不思議だな~、何だろうこれ?」というのが当たり前の反応
だと思いますし、実際そのようでした。

ほんの入り口に過ぎないにしても我々の世界を体感して貰って、
音楽的である部分や物理的である部分に興味をもって貰う事が
出来たなら、今回の企画は大成功だと思いますが、その結果は
もっと先に出てくるものなのでしょうね

調律を少し体感して貰った後は、デザートとしてピアノ奏者の
佐渡さんに3曲、子供達が一部調律したピアノで演奏して貰いました
スペインの民族的な響きが新鮮なアルベニスの作品とドビュッシーの
有名な「月の光」など、調律が狂っていても弾く人が違うとこうも
美しく聴けるものなのだな~っと私はひとり感心していました。
やっぱり演奏がなくっちゃね!

最後の曲シュミットの「オールオブミー」ではパフォーマンス的な
弾き方に子供達も釘付けになっていました。

それは大きな拍手の音で幕を閉じた、今回の「12歳のハローワーク」
でありますが、時代に埋もれそうでもある技術の仕事をやはりニーズに
必要な数と質を残して行くために「ピアノ調律師協会」のするべき
事業の一つであるのかも知れないと思う次第でした。

京滋地区 大石浩也